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2016.05.23

専門家は「2・5人称の視点」が大切

評論家的になりがちな「3人称の立場」

「水と油」という諺があります。
人間関係で譬えれば、話し合っているのだが、本質的な考え方の違いから、どうしても意見が折り合わず、相手を受け入れることができない状態のことです。
ノンフィクション作家の柳田邦男氏は、私たちが物事を判断するうえで、その人がどういう立場から対象を見ているかという、“ものを見る目”の人称性、すなわち1人称(私)、2人称(あなた)、3人称(それ以外)という立場によって、物事の見え方が変わってくると指摘しました。
確かに、1人称(私)と2人称(あなた)の立場は、当事者、対話の関係であり物事に直面していますが、3人称(それ以外)の立場の人にとっては他人事であり、当事者の気持ちを理解できないこともあるでしょう。
どうしても、評論家の立場から一般論に終始してしまうのです。

専門家は「最適化」を担う重要な立場

すでに掲載されている終活コラムにおいて、サクセスフル・エイジング(幸せな老後生活)を実現するために、わたしは、エンディングワークの中核である「本人・家族(代理人)・専門家の三位一体モデル」に、生涯発達心理学のSOC理論「補償を伴う選択的最適化」を応用して考えることを提案しました。
この三位一体モデルを人称性に当てはめると、本人は1人称(私)、家族は2人称(あなた)、専門家は3人称(その他)となります。
そして、専門家がSOC理論の「最適化」を担うためには、評論家的な3人称の視点ではなく、次に述べる柳田邦男死が提唱する「2・5人称の視点」が重要であると思います。

柳田邦男氏が提唱する「2・5人称の視点」

ここで、ノンフィクション作家の柳田邦男氏の「2・5人称の視点」が専門家の役割を考えるうえで、とても示唆に富む内容なので、以下、詳しく紹介します。
柳田邦男氏は、ジャンケレヴィッチの「死の人称」を応用して、医療現場における、医者が患者に対するあるべき関係性を人称性によって表現しました。
ジャンケレヴィッチは、死を文法範疇の人称を使って三つに区分しています。
「1人称の死」は(私)自分の死、「2人称の死」は(あなた)近親者の死、そして「3人称の死」は(それ以外)他人の死です。
そこで、柳田邦男氏は、「1人称の視点」患者の視点、「2人称の視点」を家族の視点、そして、「3人称の視点」を医師の視点に置き換え、医者が患者に対するあるべき関係性を表現したのです。
すなわち、医師は、「2人称の視点」患者に対して自分の家族に寄り添うような温かさと「3人称の視点」専門家としての知識と能力をかね備えた「2・5人称の視点」を提唱したのです。
 

命をあずける医師は、「2・5人称の視点」の人物

サクセスフル・エイジングを実現するためには、その条件を満たす環境を創り出すことが大切です。
そして、その「最適な環境」を提案し、実現に協力してくれるのが「2・5人称の視点」の専門家なのです。
人生の完成期としてセカンドライフ、さらにその先のサードライフを考えるとき、医療、介護、福祉、法律、宗教、葬送など各分野の「2・5人称の視点」専門家を選び、できるだけ早くその指導をうけて、最適な環境創りに取り組むべきだと思います。
限られた人生の時間を有意義に過ごすためにも、方向性が決まらず試行錯誤を繰り返すよりも専門家の判断を参考にすべきでしょう。
例えば、まず、高齢者住宅に入居するか住み慣れた自宅で過ごすかなど終の棲家を決め、財産管理等の代理人を決めると共に、家族のために相続対策などを行っていきます。
そして、最後の課題となる医療・介護の面で重要な役割を果たすのが、気軽に相談することができる「かかりつけ医」の存在なのです。
 
わたしは、死別体験をした人の集まりである遺族会の運営に参加していますが、遺族の中には、医療関係者に対して不信感を持っている人が意外と多いのです。
「命」をあずけ、「死」を委ねる医師は、家族のように信頼できる「2・5人称の視点」であってもらいたいものです。

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