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2016.05.01

本人・家族・専門家の三位一体モデルとSOC理論

幸せな老後を過ごすためのSOC理論

「サクセスフル・エイジング」とは、とても耳触りがよい言葉です。
このサクセスフル・エイジングを実現し、幸せな老後を過ごすために、生涯発達心理学の理論に「補償を伴う選択的最適化(selective optimization with compensation=SOC)」があります。
人生、その最期の瞬間まで、周りの人に迷惑を掛けず自立した生活を送ることは、誰もが望むことでしょう。
このSOC理論は、米国の心理学者であるポール・バルテスによって提唱されました。
バルテスは、ポーランドのピアニストであるルービンシュタインの事例をあげて、SOC理論を説明しています。

SOC理論「補償を伴う選択的最適化」とは

ルービンシュタインは、95歳で人生の幕を閉じましたが、驚くことに89歳まで現役で活躍し、国際的なピアニストとして大いに名声を博したのです。
生涯発達心理学のSOC理論「補償を伴う選択的最適化」の「補償」とは、加齢に伴って身体機能が低下するなかで、楽曲を全体的に遅く弾くことで、早いパートを少し早く弾くだけでも、そのコントラストによって、聴衆に早く弾いているように感じさせる。「選択」とは、コンサートの演奏曲を絞り込むことで曲目を減らす。
「最適化」とは、一曲の練習時間を増やして曲の完成度を高めるということです。
 

健康寿命と平均寿命の差が問題になる

このルービンシュタインの場合は、健康長寿にめぐまれ、本人の資質と努力の上に、サクセスフル・エイジングを勝ち得ることができた成功事例と言えるでしょう。
しかし、現代社会は、医療技術の進歩はめざましく、その恩恵を受けて、健康寿命と平均寿命の差がますます広がっています。
そのため、誰かの助けが必要となる健康寿命が過ぎた後、平均寿命までの10年あまりをどう過ごすが問題になっているのです。
 

三位一体モデルにSOC理論を応用する

そこで、エンディングワークの中核である「本人・家族(代理人)・専門家の三位一体モデル」に、生涯発達心理学のSOC理論「補償を伴う選択的最適化」を応用してみたらどうなるでしょうか。
SOC理論の「補償」は、三位一体モデルに置き換えれば、身体機能が低下した本人に代わって家族(代理人)が代理を務める。「選択」とは、本人の意思で残された人生の課題を絞り込むこと。
そして、「最適化」とは、専門家が問題解決を支援することです。
ただし、例えば、専門家が遺産分割をうまく行ったが、その結果、家族の絆がズタズタに切れてしまったのでは「最適化」とは言えないでしょう。
法諺(ほうげん)である「よき法律家は悪しき隣人」が示すように、物事をすべて法的思考で割り切ることはできないのです。
そこで、柳田邦男氏が提唱する「2・5人称の視点」、すなわち、自分の家族に寄り添うような温かさと高度な専門性を兼ね備えた専門家の視点が、「最適化」の実現には必要となるのです。
 

人生の達成度100%を求めない

サクセスフル・エイジングを考えるとき、現役時代に社会の第一線で大活躍した人は、老後を迎えてもビジネス社会で評価されたという栄光の記憶、その感覚が忘れられないものです。
しかし、受け入れ難いことですが「普通のこと」ができなくなるのが老後です。
長寿社会においては、心身機能の低下は避けられません。
サクセスフル・エイジングのためには、肉体的自立にこだわらず、精神的自立をめざすことも必要だと思います。
人生の達成度100%を求めず、70%でも満足することを学びたいものです。

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