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2016.09.02

葬儀社を「価格」で選んで良いのか‼

葬儀の小規模化と儀式の簡素化

現在、家族中心で行う「家族葬」が葬儀の代名詞になる程、葬儀の小規模化が全国的に進んでいます。
また、葬儀の儀式面においても、首都圏を中心に、ワンデーセレモニー(一日葬)や葬儀式に続けて初七日法要を行う「式中初七日」が出現するなど、儀式の簡素化が広がっています。
そして、このような葬儀の小規模・簡素化が拡大する中で、葬儀社選びの基準が「葬儀価格」しかも低価格の傾向にあるのではないでしょうか。
確かに、快適な儀式・生活空間を備えた葬儀会館が普及し、女性社員や派遣スタッフによる接客・接遇が一般化、葬儀自体が標準化している現状を考えれば、どこの葬儀社に頼んでも提供されるサービスのレベルが同じなのであれば、近くて低価格な葬儀社を選ぶことは当然なことでしょう。(参考コラム「家族葬とは?」

葬儀の意義や役割を考える大切さ

ここで考えたいのが、葬儀の意義や役割を考えずに、葬儀を“価格”だけで評価していいのかという問題です。葬儀業界には、葬祭ディレクター技能審査という公的な資格制度があります。この資格試験の参考書「葬儀概論」では、葬儀の役割には、次の5つがあると記載されています。
①社会的な処理  ②遺体の処理  ③霊の処理 ④悲嘆の処理 ⑤さまざまな感情の処理です。
以下、項目ごとに簡単に説明してみましょう。
 
①社会的な処理
人間は社会的動物と言われように、その死は関わり合いのある人達に大きな影響を与えるため、社会に対して「死の告知」が必要になります。また、死を起点とした法的手続きが必要であり、役所に提出する死亡届を初めとして、行政に対して各種手続きを行います。特に、相続にともなう手続きは重要です。
 
②遺体の処理
生命体である人間は、その活動が停止すると腐敗をはじめます。死者の尊厳を守るために、身なりを整えると共に公衆衛生上の処理を施す必要があります。そして、現在、病院内での感染(院内感染)の危険性もあるので、遺体の移送や自宅安置・納棺、火葬まで、遺体処置の専門的知識が葬儀社には求められています。また、エンバーミング(遺体衛生保全)という科学的な処置を行えば、衛生的な環境で、まるで眠っているかのような故人との対面や儀式を通してのコミュニケーションが可能になります。
 
③霊の処理
宗教儀礼として、故人の霊を「この世」から「あの世」に送ることです。そして遺される人は「あの世」の存在を信じることで、安住の地にいる故人との関係性を保てるのです。それでは、無宗教式の葬儀では、どうなるのでしょうか。実は、無宗教葬とは、特定の宗教に拠らない宗教的行為です。ですから無宗教形式でも、故人をやすらぎの世界に送る儀式と考えることができるのです。(参考コラム「お葬式の中心人物は誰でしょうか?」
 
④悲嘆の処理
遺族は、最愛の人を失うと、その衝撃から心と身体に変化が生じます。そして、遺族が直面する、死別による悲嘆を癒して行く「心の作業」を「グリーフワーク」と言います。実は、この遺族が悲嘆から回復していく過程である「グリーフワーク」は、臨終、通夜、葬儀、火葬、法要という葬儀の儀式過程と密接に関係していて、この儀式過程が遺族の心身ともに支えとなるのです。ただ、学術的な話ですが、 現在、研究者の間では、「グリーフワーク」という概念について、問題点が指摘されていることは、知っておいてください。
 
⑤さまざまな感情の処理
人は死に接した時に、死霊に対する恐怖と故人に対する愛惜の念を同時に抱くというアンビバレントな状態になることがあります。これは、葬送儀礼の歴史から見れば、古代共同体の自然宗教における『死霊への恐れ』と、中世、鎌倉時代の創唱宗教おける『追善供養』との重なり合いが事例として挙げられます。この死霊への恐れと愛惜の念という相矛盾する感情を同時に処理するためには、さまざま意味をもつ儀式の多声性が重要になると思います。
 

故人の人生を尊重する

葬儀には、人類が死者を埋葬し始めて以来の長い歴史があります。
葬儀の意義や役割は、死者の尊厳を守り、遺族の悲しみを癒し、社会的関係を大切にすることだと言えるでしょう。
そして、死者の尊厳を守るとは、遺体に丁寧に接することだけではありません。
わたしは、故人の存在、故人の人生を尊重することだと思います。故人の存在とは、もちろん肉体を含みますが、故人の人生観、人間関係、財産、記憶(思い出)などといったすべての総体であると考えることができるのです。
そして、葬儀には“価格”だけでは換算できない大きな価値があると思います。
まず、何をおいても、葬儀社には、葬儀の意義や役割を理解し、それを葬儀に反映できる能力が求められます。

葬儀社選びは、“価格”ではなく“資質”を基準にすることが大切ではないでしょうか。

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